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風呂を済ませ日本刀室に戻った白雪の目の前に映ったのは、壁際に疲れたように座り込んだ芭唐の姿だった。
特訓に使う日本刀は畳の上に打ち捨てられ、短冊はまだ切られてはいない。
「・・・・他の二人は?」
部屋を見渡し、問いかける。
芭唐は面倒そうに壁に寄りかかっていた体勢を起こし、頭を掻きながら答える。
「猿野は外、由太郎は売店っすよ」
「外って、雨降ってるのに?」
白雪は部屋の窓から覗く大雨に目を走らせる。
芭唐は口の端を持ち上げ、肩をすくめる。
「バカが考えてることはわかんねーっすから」
「そんな風に言うもんじゃないよ」
「はいはーい」
それきり会話はふっと途切れ、妙な緊張感が走る。
置時計の音が、カチコチと妙に煩い。
窓越しの雨の音だけが、優しくかんじられる。
「大神さんの、ことだけど・・・・」
押し殺した声で何かを必死に搾り出すように、芭唐は続ける。
「アンタも、オレのこと・・・・」
言いよどんで、フイと視線を逸らした。
「やっぱ、いい」
「恨んでるか、って?」
いつもより少し落ち着いた声音に、芭唐は顔を上げる。
白雪はいつもの微笑を消し、芭唐の方へ歩み寄り、屈んで視線を合わせた。
芭唐は一瞬たじろぎ、視線を振り払うように一気にまくし立てた。
「だってそうだろ!?オレさえ居なければ、あのひとはあんなことにならなかったし、アイツらだって・・・・アンタだって傷つかずに済んだ・・・・」
白雪は、静かに芭唐を見つめている。
「全部、オレのせいだ・・・・」
項垂れる芭唐の肩を、白雪はそっと撫でる。
「そうやって、いつも自分を責めてきたの?」
優しい声音に、芭唐の顔が上がる。
「誰にも言えずに、ずっと抱えていたの?」
白雪の眼鏡越しの真っ直ぐな視線が、芭唐の歪んだ眼差しとぶつかる。
「・・・・・・」
「ずっと、一人で耐えてたんだね」
白雪は苦しげに歪む芭唐の顔を労わるようにその手で包む。
「でももう、赦されていいんじゃないかな」
「・・・・ゆるす?」
「もう、充分キミは苦しんだよ」
ふわり、と白い腕が芭唐の背中に回される。
「ボクも、苦しかったけど・・・・キミも、おんなじだったんだよね」
一時は恨んだときもあった。
泣き疲れて寝た夜は、数え切れない。
でも、それは自分だけじゃない。
失った重さは彼も同じなのだから。
「う・・・っく・・・・」
耳元で嗚咽が聞こえる。
何年もずっと押し殺してきた感情が、いま少し解れたのだろうか。
ずっと・・・・キミは誰かにこうやって赦して欲しかったんだね。
「アイツも、キミがそんなに気に病んでいるのは見たくないはずだよ」
芭唐は頷いて、ぎこちなく白雪の背中に腕を回す。
震える指先が浴衣を掴んだ。
「ねぇ、それにねそんな顔したキミを見るのは・・・・ボクだって辛いんだよ」
芭唐の瞳から溢れる涙を優しく拭ってやる。
初めて垣間見た彼の弱さを、不意に愛しく感じた。
「あ・・・・」
「オーッスただいま!あれー監督来てたんだ!」
芭唐が何か言いかけた途中で、ビニールをぶらさげた由太郎が戻ってきた。
「うん、少し様子を見に」
白雪は大して動揺せず、由太郎にいつもどおりの笑顔を向ける。
芭唐は気まずそうに涙の跡を隠し、白雪から離れた。
「じゃぁ、由太郎くんも戻ってきたことだし、ボクはちょっと出てくるね。また様子見に来るから」
「もう行っちゃうのかー、監督忙しいんだな!」
由太郎は買ってきたお菓子を取り出しながら、無邪気に言う。
白雪は軽く「まぁね」と流し、その後ろにいる芭唐に視線を移した。
芭唐は口許を動かし、何事かを声なき声で囁く。
あ、り、が、と、う。
そう読めた。
白雪はにっこりと微笑み、部屋を後にする。
いつか彼の痛みを、解ってあげられるときが来るといいなぁ。
芭雪にしようとしたら雪芭ぽくなった。
文章は難しいよ。絵も難しいよ。
もう知らない!!←逆切れ
芭雪好きですよ、芭雪。
画像、一番増しに見えるサイズがこんなだった・・で、でかすぎ・・!!