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リノリウムの床に、自分の足音が寂しく響く。
誰もいない学校。静かな放課後。
窓から差し込む沈みかけた西日が、やわらかくも眩しい。
この光のせいか、なんだか別世界に迷い込んでしまったように感じる。
細く、暗くなっていく廊下。
いつもキミとこの道を並んで歩いたね。
――覚えてる?
いつだったかキミはボクをひどく怒らせて、この廊下で追いかけっこをした。
キミは全力疾走で、屋上までの階段をひた走って。
「屋上は行き止まりだよ!?」
勝ち誇ってそう叫んだボクの言葉も聴いていなかったみたいに。
駆けていく背中はとても自由で。
とても眩しかった。
ボクは、その大きな背中を掴もうと追いかけて。
流れるように息を切らして。
長い階段を上って、重いドアを開けた。
そしてまた走り出そうとして。
「捕まえたッ!!」
突然、ガバッと大きな腕に包まれた。
気づけばキミの腕の中にいた。
ふわって、おひさまのにおいがしたよ。
「うおわっ!」
「!?」
スタートダッシュの勢いが思ったよりも激しかったみたい。
ボクたちはそのまま硬いアスファルトへと倒れこんだ。
「いってー!!大丈夫かユキ・・」
キミはボクを抱きかかえたまま、思い切り背中を打ち付けてた。
離そうと思えば離せたのに・・
痛がる様子がなんだかかわいそうで、怒りも引っ込んじゃった。
「うん。大神こそ平気?」
キミが下敷きになってくれたからボクはなんともなかった。
ムクリと起き上がって。
改めて見る自分たちの体勢に気づいて。
・・・・少し、気まずくなって。
目を合わせて、同じタイミングではにかんだ様に笑い合った。
自分の鼓動が息をするのも苦しいほど速かった。
どうしてだかわからないけど、どうしようもなく恥ずかしくなった。
いつの間にか屋上へ続く階段を昇っていた。
目の前のスチールの重い扉。
・・・・開けたらまたキミに会えるような気がして。
そんなこと、あるはずがないってわかってるのに。
ギィイ、と軋んだ音を立てて扉を開ける。
外は暗く、冷たい風が痛いほど吹いていた。
ホラね、居るはずなんてない。
キミのおひさまみたいな笑顔には、もう二度と会えないんだ。
わかってる、わかってるよ。
・・・・でもね、思うんだ。
キミと過ごしたあの時間は、今でもボクの中にちゃんとあるのに。
どうして。
――どうしてキミだけが、居ないんだろう。
「てる・・」
呟いた一言は、風が攫っていってしまった。
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暗いネタしか思いつかない。